コヴェント・ガーデンの思い出 テムズ南岸の名指揮者たち
テムズ南岸の名指揮者たち ・ 外伝

ヴァルター・ヴェラー
( Walter Weller )

1939年11月30日ヴィーン生

ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団

・1980年2月24日席 1-R-1/2/3 値段 £5.20
 Mozart Masonic Funeral Music,K.477
 MahlerSymphony No.2 ‘Resurrection
(Sheila Armstrong, Soprano)
(Anne Howells, Mezzo-Soprano)
(Brighton Festival Chorus)
(Laszlo Hetlay, Conductor)

 ヴェラー は既出の アンタル・ドラティ の後を襲って、この年の年の9月に ロイヤル・フィルの首席指揮者に就任の予定とプログラムの紹介されています。
当時はロイヤル・リヴァプール・フィルの首席指揮者とボン市立交響楽団常任指揮者を兼務していました。 1958年ヴィーン・フィルのヴァイオリン奏者に採用され、翌年にはヴエラー弦楽四重奏団を立ち上げた 早熟な人。1961年には第一コンツェルト・マイスターに就任し、1969年には指揮者としてデビューし、 ヴィーン国立歌劇場で厖大なレパートリーをこなした、いわばチャキチャキのヴィーンっ子と言えるでしょう。
英国に来る前は、ドゥイスブルクの監督やヴィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の監督を務めています。 今夕はヴィーン国立歌劇場の指揮台の大先輩であるマーラーの曲をやると言うことなのでしょうか、 切符の売れ行き大好調で、やや後ろの端っこの席しかとれませんでした。

 冒頭のモーツァルトで、やや早めのテンポで流れるような音楽を作り、まぁ遅刻客お待たせのような 感じがありましたが、その一方で、旋律線を見事に浮き上がらせつつ内声を柔らかく付けるような、 かなり聴き易い音楽だったと思いました。
 休憩をとらずに遅刻客と一部の奏者を着席させるだけで演奏に入ったマーラーは、私にとっては、 参考にする演奏も録音も無くて、「音を聴く」のは全く初めての体験。しかし、素晴らしい音楽を 聴かせて貰った、そんな印象が残っています。第一楽章が終わっても「五分間のパウゼ」は無くて 合唱を入場させただけで、モーツァルトとあわせて休憩無しで終わりましたが、最後の音が 鳴り終わった後の興奮は、当時のメモにも残っています。 全体に旋律を歌わせること歌わせること、 リズムの処理の見事なこと、舞踏を思わせる楽章の扱いなんかは、こちらの心の踊りつつも 戦慄するようです。ただ、ディナミークはもっとあっても良いと思ったりもしましたが、 何しろ初めて聴く「音」を堪能するに不満はありませんでした。
また、ロイヤル・オペラやイングリッシュ・ナショナル・オペラでお馴染みの アン・ハウエルズ の歌が 素晴らしい。第四楽章冒頭の「赤い薔薇」の一言で痺れかえる。
また、プログラムの解説が読みやすい英語で意を尽くし、歌詞の英訳は雅語をつかいながらも読みやすい上に、 詩的な言い回しなのも特筆もの。この訳詞を事前に読んでいたお蔭で、感興がいや増したと思っています。
ロイヤル・フェスティヴァル・ホールの頻繁に登場するブライトンの合唱団も、大きな合唱席を埋めつくして 迫力充分。合唱団席は、帰国後の東京のホールに比べても大人数を入れられますので、これも音量充分 (勿論ピアニッシモの表情も豊か)。全く新しいオペラを聴いたような感興をもって家路についたのでした。

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