コヴェント・ガーデンの思い出 テムズ南岸の名指揮者たち
テムズ南岸の名指揮者たち ・ 第5話

ヴィリ・ボスコフスキー
( Willi Boskovsky )

1909年6月16日ヴィーン生、1991年4月21日ナティ没

ロンドン・コンサート・オーケストラ

・1978年3月4日席 テラス H-46/47 値段 £3.50
 Johann Strauss IIWein,Weib und Gesang,Waltzer.Op.333
 Johann Strauss IIAnnen-Polka,Op117
 Josef StraussIm Fluge,Polka Schnell.Op.230
 Josef StraussDorfschwalben aus Oesterreich,Waltzer.
Op.164
 Johann Strauss II Persicher Marsch,Op.289
 Franz von SuppeOvertuere:Dichter und Bauer
 Carl Michael ZielerHerreinspaziert!,Waltzer.Op.518
 Josef StraussFrauenherz,Polka Mazur.Op166
 Johann Strauss II Banditen-Galopp.Op.378
 Johann Strauss IIKuenstlerleben,Waltzer.Op316
 Johann Strauss IIChampagner-Polka.Op.211
 Franz LeharGold und Silber,Waltzer.Op.79

 ここで ボスコフスキー を名指揮者として採り上げるのは、26年間の ニューイヤー・コンサートを指揮して、一つの時代と様式を創った人だと確信するからです。
 彼がニューイヤー・コンサートを振ったのは1979年まで。ですから、我が家が聴いた 1979年の大晦日コンサートが ロリン・マゼール の初登場だったのでした。
 三回の年末をヴィーンで過ごした我が家ですが、年末休暇の日程上から、1月1日には ロンドンに帰らざるをえず、78年・79年ともに ボスコフスキー の 新年演奏会を聴き逃したのは甚だ残念ではありました。

 さて今夕の演奏ですが、特徴を挙げれば、

  • 歯切れの良いポルカ・シュネル(早いポルカ=Im Fluge)、
  • 小粋なポルカ・フランセーズ(フランス風ゆったりしたポルカ=Annen-Polka)、
  • 詩情豊かなヨゼフのワルツ(Dorfschwalben aus Oesterreich)、
  • 女性の長い裾が身体の動きからやや遅れて回るようなワルツ(Kuenstlerleben)
  • 時にオケを煽りあげるような(Dichter und Bauer)、
  • 上質軽音楽の雰囲気たっぷりにガシャガシャする(Herreinspaziert!)

 曲それぞれの描き分けも十全で、時にヴァイオリンを弾きながらの指揮姿も好ましく、 大いに楽しいコンサート。アンコールは当然にドナウ・ワルツと観客の手拍子入りラデツキー。 遂に聴けなかった ヴィーンフィル/ボスコフスキー のコンビに代わっての 今回の演奏会は、これはこれで大いに楽しいものでした。

 このロンドン・コンサート・オーケストラという楽団は、1972年設立で所謂 ライト・クラシックを専門とするもの。ボスコフスキー指揮で聴く前の 2月11日には、クイーン・エリザベス・ホールでの、“THE MUSIC OF FRANZ LAHAR” (指揮:マーカス・ドッド)というコンサートを聴いています(席:1-S-8/9 ・値段:£2.90)。
 今回・前回ともに、レイモンド・ギャビー というプロデューサーによる興行ですが、 このプロダクションは、聴きには行きませんでしたが、各種似たようなコンサートを開いていました。

 ロンドンの聴衆はヴィーンものが好きなようで、リゴリスティックな一面と、楽しむ術と 心得た独特の成熟した一面があったと思います。
 上記二つのヴィーン物以外でも、大オーケストラや小アンサンブルが下記のお楽しみコンサートを 開いていたのを聴きました。

Johann Strausu Orchestra,Cond.:Jack Rothstein、
クイーン・エリザベス・ ホール。
シュトラウス、レハール他。
席:1-D-25/26 値段:£2.80
London Symphony Orchestra,Cond.:Bernard Keefee、
ロイヤル・フェスティヴァル・ホール。
シュトラウス、ワルトトイフェル、オッフェンバッハ他。
席:1-H-34/39 値段:£3.00
Royal Philharmonic Orchestra,Cond.:Alun Francis、
ロイヤル・フェスティヴァル・ホール。
シュトラウスとレハール。
席:1-M-8 値段:£3.85

 時間が取れれば行けるものに行く、そんな切符の取り方でしたが、三年間に合計五回の ヴィーン物中心のコンサートとは、数としては決して少ない方ではない。
 ROHやENOのオペレッタの採り上げ数と併せて見ると、ロンドンの聴衆の ヴィーン好きもなかなかのものだと思ったのでした。

 その後に ボスコフスキー の指揮を聴いたのは、帰国後の日本フィルとの シュトラウス・ファミリーの演奏会(人見記念講堂)の一回だけ。こうなると、年末 ヴィーン行きの時に、一回でも良いから元旦まで休暇を伸ばしてニュー・イヤー・コンサートを 聴いておくべきだったと悔やむことしきりです。

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