コヴェント・ガーデンの思い出 テムズ南岸の名指揮者たち
テムズ南岸の名指揮者たち ・ 第2話

オイゲン・ヨッフム(Eugen Jochum)

1902年11月1日バーベンハウゼン生、1987年3月26日ミュンヘン没

ロンドン交響楽団

・1978年10月10日席 1-G-11値段 £4.25
 MozartSymphony No.33 in B flat major,K.319
 SchumannPiano Concerto in A minor,Op.54
(Maurizio Pollini, Piano)
 BeeethovenSymphony No.8,in F major,Op.93

 冒頭の モーツァルト の第一楽章では、弦の表情に統一感がなく、一部にがたがた していたようでしたが、今夕の華は ポリーニ の シューマン でしょう。

 全編を貫く硬質でクリアな音色、クリアでありながら冷たくならない詩情。 整然とした音の並び、整然でありながら静的にならない力感。繊細な郷愁感と 哄笑にまでは至らない微笑の交錯。最終楽章の確かな推進力も決してがたがたせず、 微笑を湛えながら乱れの無い確かな足取りで終始する。
 ポリーニ につけるオーケストラも、やや重い音色感ながら、 それが却って ポリーニ の独特の透明な色彩を際立たせて、 「ピアノとの会話」を際立たせていました。これは凄いものを聴いた、 そんな印象が強く残っています。

 最後の ベートーヴェン は、これこそがドイツの音と言えるでしょう。 第一楽章冒頭の音からして、重厚な低音を基調とする。それでいて過度にならない 抑制の聴いた弾性感が全編を支配する。重厚にならないスケルツォのユーモア感 も適度だし、最終楽章のこれも抑制に聴いた重厚さも大いに聞き物でした。

 当時のロンドン交響楽団は、Principal Conductor が アンドレ・プレヴィンで、 Principal Guest Conductors にクラウディオ・アバド と コリン・デイヴィス 、 そしてConductor Laureateが オイゲン・ヨッフム という布陣でしたが、 ヨッフム を聴いたのは今夕だけ。デイヴィス は聴けず (ROHのオペラはかなり聴いた)、首席指揮者プレヴィン は4回聴きましたが、 在ロンドンのオーケストラの中で、機能性と重量感を最高に両立させたロンドン響と ヨッフム の組み合わせを,もっと聴きたかったと今でも思っています。

 私の在ロンドン中に聴いた ヨッフム は、今夕以外は、思い出記本編に書いた ベルリン・ドイツ・オペラの『フィデリオ』だけ。

帰国後は、

バンベルク響 1982/9/15 NHKホールブルックナー8番
 1982/9/16 東京文化会館ベートーヴェンコリオラン
 6,7番
コンセルトヘボウ1986/9/16 人見記念講堂モーツァルト33番
 ブルックナー7番

 あの素朴で雄大な音楽には、もう接することが出来ないのですね。

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